百道の砂浜から、兄鷲達が散華された南の空へ、
そして安らぎの靖国の空へ、
ルミ子の父は手を合わせる。
「雲の墓標」に祈るのだ。
ー吾らに変わりて 代わりなき若き命を
南海の千尋の底に沈めし若き勇士たちよ
今日よりは安らけく瞑れー (特攻碑 碑文)
ルミ子は父を見上げる。
ルミ子は父を真似て、砂遊びの小さな手の平を合わせようとする。
手の平から白い砂がほろほろと落ちる。
合掌する父の姿は、ルミ子の幼い心に刻まれた。
二十数年後、映画「白蛇抄」のラストシーンで、
恋人の振り下ろす鉈の刃の下で、
身篭ったルミ子は嬉しそうに手を合わせる。
何に祈っているのか。
渾身の絶唱「湖の祈り」で、ルミ子は手を合わせる。
♪ ただひとつだけの愛に生命を捧げた
あのマリモのように 湖に祈る ♪
ルミ子は何に祈っているのか。
自身も識らないのかもしれない。
ルミ子は、遥かな「雲の墓標」に、
遠い「父」の記憶に、
祈っているのだ。
愛に殉じた人々に。
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