ルミ子は幼い頃、母・愛子にひどい悪態をついたことがあると言う。
「足の不自由な母に対して、幼い私は、『お母さんと一緒に歩くとカッコ悪いから、離れて歩いてよ』
そう言って私はいつも母の先を歩いていたのです。後から、足を引きずりながらゆっくりゆっくり歩いてくる母の悲しい胸の内なんか考えようとせず、そんなひどい事を言って決して並んでは歩かなかったのです。
どんなに辛かったでしょう。どんなに悲しかったでしょう。どんなに悔しかったでしょう。
何てひどい事を言ったのだろうと、私は今、心から謝りたいのです。
『お母さん、本当にごめんなさい。足の痛みよりもっと痛い事を言って悲しませていた事をゆるしてください』」
(小柳愛子著「小柳ルミ子の真実」のあとがきから抜粋)
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ルミ子がなにか言っているわ
並ばないで ですって?
なにを言ってるのよ 私はルミ子のズーツと前を走ってるのよ
私はルミ子 ルミ子は私
牝鹿のようにはしるわ
日に焼けて フフ 真っ黒な足
強靭な足 凛として
スポットライトが交錯するステージのセンターへ
踊り出るのよ
大歓声が迎えてくれる
命の限り 唄い踊るの
この足が空を翔けるわ
私の愛の歌が 感動の空間に満ちるのよ
人々は 時の経つのを忘れる
それは私 私はルミ子 私の命
いつか きっと
私達の季
ア ルミ子が先に走って行くわ
ホホ まだまだ 私に追いつくには 10年早いのよ
はいはい 先に行きんシャーイ
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愛子の回想録の中に、ルミ子の悪態の場面の記述はない。
ルミ子が悔いて胸を痛めている程には、愛子には応えていなかったのだろう。
いや、愛子には悪態の記憶すらなかったのではなかろうか。
可愛い娘の悪態なぞ、母には幼子の甘え声でしかないのだから。
心の中で、胸の中で、いつも一緒に走っていたのだ。
唄ってよ 愛の歌を
踊ってよ 空を翔けて
by 柘植信彦
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