2010年7月15日木曜日

二人の夫 と 愛子

ルミ子の母・愛子は、初婚の夫・光義の葬儀を次のように叙述している。

「光義の葬儀の日。 (略) 焼き場にも留美子を連れていきました。当時の焼き場は設備が貧弱で、亡骸を焼いているところが扉の破れ目から見えました。吹く風がまだ肌寒い。私は留美子を抱いて光義の亡骸が焼かれていくのを見ていました。光義の頭蓋骨がビチッと割れて、ジューッと脂が流れ出す・・・。煙突から煙が空に上って行く。私は涙も流さず、黙って立ち尽くしていました。」(「小柳ルミ子の真実」小柳愛子著)

一方、二人目の夫・忠士の葬儀については、娘のルミ子に次のような記述がある。

「人前では決して涙を見せない気丈な母が、私の前で見せた涙は五回。はっきり覚えています。 (略) 三回目は、二度目の父、忠士が亡くなった時。遺体が焼かれる直前、お棺にすがって、「さいなら! さいなら! 熱かろ!」と号泣した母。あんなに取り乱した母ははじめてでした。」(同上書に寄せたルミ子のあとがき)

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愛子の姿は 私達に何を語りかけて来るのだろうか

光義を見送った時 愛子は2歳7ヶ月のルミ子を抱え 暗い不安の裡にあった

忠士を見送った時 ルミ子は既にスーパースターとして 高く羽ばたいていた

愛情の深浅なぞを見出そうとするのは 愛を信じる者に 相応しくない

ただ私達は 人の愛の姿 愛の在り処に 悄然と立ち尽くすのみである

  ♪  女のひたむきさと 男の暖かさ
    ひとつに寄り添えたら 素敵でしょうね
   今日まで生きて来て 今日まで生きて来て
       良かったと思います

     女の臆病さと 男のぎこちなさ
    ひとつに溶けあえたら 素敵でしょうね
   今日まで生きて来て 今日まで生きて来て
       良かったと思います

      東京の空の下 東京の空の下
        あなたと出会えて   ♪

   (小柳ルミ子<東京の空の下で>より)


二人の夫を見送った愛子は 2006年冬 天に召される

享年86歳  法名 釈尼雅詠

ルミ子という輝きを 私達に残して

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光義 忠士 愛子の三人は 一つの墓に眠るという

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唄ってよ 愛の歌を
踊ってよ 空を駆けて

    by 柘植信彦

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