ルミ子の父は予科練だった。
先輩兄鷲達は続々と戦死した。
自分も後に続く覚悟だった。
しかし生き残ってしまった。
後に続く者を信じて大空に散った先輩達を自分は裏切ったのだ。
「靖国で会おう」と言い残して散華して行った先輩達に申し訳ない思いに苛まれた。
愛子の声を聞いた時、生への情熱が沸々と胸に湧き上がって来た。
自分の腕の中で寝息を立てているルミ子を見詰めていると、男子としての責任に身震いする思いだった。
愛子の為に、ルミ子の為に、生きよう。
かって愛する者の為に死に赴くことを決意した自分が、愛する者の為に生を決意した。
敢然と祖国に殉じた先輩達も、きっと微笑んで赦してくれると思えた。
ー若い血潮の予科練の 七つボタンは桜に錨ー
若い父の唄う「若鷲の歌」でルミ子は寝入った。
ルミ子の子守唄だった。
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